「朝食抜き」は脳出血、高血圧、糖尿病のリスクが大きくて危険?
■朝食を抜くと生活習慣病のリスクも高まるという研究結果
最近の朝食のブームが写真の美味しそうな「エッグベネディクト」ですが・・・
こんな朝食をしっかり食べる人はともかく、
朝食を抜くと、脳出血や高血圧、糖尿病になる危険性が大きいって、知ってました?
朝がなかなか起きられない、起きてすぐ朝食を食べる気になれない、
朝は食欲がゼロに近い、時間がギリギリだから食べたくても食べられない・・・
いろんな理由で朝食を食べないという人、意外と多いんですよね。
でも、先日、朝食と健康に関するショッキングなニュースが報道されました。
国立がん研究センターなどの研究チームが、
朝食を抜くことが多い人は、毎日食べる人に比べて、
「脳出血」のリスクが3割以上も高まる」という研究結果を公表したんですね。
これまでにも、朝食を食べないと集中力が低下し、
スタミナ不足になり、
仕事や勉強などの作業能力が落ちる、と言われてきました。
そんな中、この研究の結果、
朝食を抜くと脳出血のリスクが上昇するという可能性が指摘されたのです。
これは、世界で初めてのことなんですね。
では、その研究とはどんなものか、といいますと・・・・
■一週間あたりの朝食抜きが多いと脳出血のリスクが高くなる
朝食を抜くと、肥満や高血圧、脂質異常症、および糖尿病のリスクが高まる・・・
ということは、これまでにも多くの研究で指摘されてきました。
朝食を抜いてダイエットする女性も多いのですが、
じつは朝食を抜くと、逆に肥満してしまう傾向があったんですね。
とはいえ、朝食抜きと脳卒中や虚血性心疾患のリスクについては、
これまでほとんど研究されていませんでした。
今回の国立がん研究センターと大阪大学の共同研究チームの研究は、
全国から選ばれた45~74歳の男女約「8万人」を対象に調査したものです。
その内容としては・・・、
一週間あたりの朝食摂取回数に関する質問から、
週に0~2回、週に3~4回、週に5~6回、
および毎日食べるという「4つの群」に分けて調査。
その後の脳卒中および虚血性心疾患発症との関連を分析し、
平均で約13年という年月をかけた追跡期間中に、
3,772人の脳卒中発症と、870人の虚血性心疾患発症を確認したそうです。
それが下のグラフに表されています。
そして、さらに詳しい解析の結果、
朝食を毎日食べている群と比べて、週に0~2回しか食べない群の発症リスクは、
なんと「脳出血」で36%も高く、脳卒中全体でも18%高いことがわかりました。
関連性は見られなかったということです。
ちなみに、この「脳出血」の最も重要なリスク因子は高血圧で、
とくに、早朝の血圧上昇が重要なリスク因子であるといわれています。
この研究結果によって、朝食を食べない人は、
毎日朝食を食べる人に比べ「脳出血」のリスクが36%も高くなるわけですが・・・
では、「脳出血」とは、いったいどんな病気なのでしょうか?
■「脳出血」で亡くなった方は3万人以上という怖い病気
厚生労働省の「人口動態統計の概況」によると、
平成26年1年間の死亡総数のうち、脳血管疾患は11万4,207人で、
全死因の上位から4番目。
このうち、「脳出血」で亡くなった方は、3万2,550人!
このほか、くも膜下出血は1万2,662人、脳梗塞は6万6,058人にも達しています。
脳血管疾患で亡くなった方の数を性別で比較すると、
男性は5万4,995人で男性死因の、第4位。
また、女性は5万9,212人で、女性の死因の、第3位でした。
そもそも「脳出血」とはどんな病気かといいますと、
脳内の血管が何らかの原因で破れてしまい、脳のなかに出血した状態をいいます。
そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れて、
血腫(けっしゅ)が大きくなると脳浮腫や脳ヘルニアを起こし、
重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。
では、その原因はなにか、といいますと、
じつは、「高血圧」が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めています。
たとえば、脳内の細い小動脈に動脈硬化があったときなど、
これに伴ってできる小動脈瘤(小さな血管のこぶ)の破裂が脳出血の原因になります。
そのほか、脳動脈瘤、腫瘍内出血、脳の外傷、
白血病などの血液疾患が原因になりますが、
「脳出血」を起こすと、一般的には頭痛、嘔吐、意識障害、
片麻痺といった症状が多くの患者さんにみられます。
出血部位や血腫の大きさによって症状は違いますが、
半身麻痺、感覚障害、両眼とも視野の片側半分が見えなくなる状態などが主な症状で、
進行すると意識障害や失語症といった後遺症が残ってしまうんですね。
では、なぜ朝食を抜くと「脳出血」が起こりやすくなってしまうのか。
その理由を調べてみました。
■午前中が「脳出血」のリスクを高める「魔の時間帯」に
じつは、高血圧には原因がはっきりしている「二次性高血圧」と、
原因がよくわかっていない「本態性高血圧」とがあります。
「二次性高血圧」は、腎臓、心臓、血管、内分泌系の異常などが原因として考えられ、
原因となっている病気をきちんと治療すれば血圧も下がってきます。
一方、原因のはっきりしない「本態性高血圧」は、
日本人の場合、圧倒的に数が多く、80~90%に達しています。
もともと、高血圧になる遺伝的素因がある人に、
塩分の多い食事や飲酒、ストレス、運動不足などの環境因子が影響して、
高血圧になってしまうんですね。
通常、私たちの体は目覚める前から血圧を徐々に上げて、
朝起きてからの活動にむけて準備を始めます。
起きたあとは、正常な人の血圧はしだいに下がって行きますが、
高血圧の素因がある人は上がりつづけてしまい、
「早朝高血圧」と呼ばれるような状態になってしまいます。
じつは、起床時間も朝方から午前中は、
ここが「魔の時間帯」なんですね。
朝食を抜いてしまうと、空腹によるストレスなどから血圧が上昇し、
この「早朝高血圧」に拍車がかかってしまいます。
つまり、朝食を抜くことで朝の血圧が上昇し、
毎日朝食を食べる人に比べて「脳出血」のリスクが高くなるというわけです。
さらに、朝食抜きで昼食、夕食だけという場合、
「食後高血糖スパイク」と呼ばれる、血糖値の急上昇を招きやすくなるといわれています。
つまり、高血圧だけでなく、「糖尿病」のリスクも高まってしまうわけです。
朝食を食べると、どんなメカニズムが働くかといいますと、
食べることによって胃や肝臓や腸が動きはじめ、そのシグナルが脳に伝わります。
脳はその信号をキャッチして、血圧を上げるホルモンの分泌を抑え、
正常値に調整するように働きはじめる、というわけです。
では、脳出血を予防し、高血圧や糖尿病を防ぐために、
より効果的な朝食の食べ方はあるのでしょうか?
■脳出血の予防には朝食は起きてから一時間以内に
血圧を異常に上げないようにするために、
朝食を食べるベストタイミングはというと・・・
起床後、一時間以内がベスト、といわれています。
これは起床時の血圧がピークに達する前、
「魔の時間帯」が訪れる前に朝食を食べることで血圧がコントロールできるんですね。
起きてから血圧が上がりはじめ、
胃腸の受け入れ態勢が整ったあたりが、モーニングタイム。
では、朝食に何を食べたらいいのでしょう?
基本的には、和食ならばご飯に味噌汁、焼き魚、お浸しといった
ごく伝統的なメニューが理想的。
洋食ならば、パンにスープ、サラダ、ベーコンエッグ、果物などの
コンチネンタルスタイルがおススメだとか。
ただし、「忙しくてそんな理想的な朝食なんて食べられないよ」、
という方がほとんどだと思います。
では、どうすればいいのか?
「脳出血」のリスクを減らすためには、
食べることによって胃や肝臓や腸を動かし、そのシグナルを脳に伝え、
正常値に調整するように働きはじめることが大切です。
できるだけ、ご飯やパンなどの固形物を食べることが大事ですが、
シリアルやスムージー、ヨーグルトでもOK。
コーヒー一杯だけというよりは、
スープや味噌汁を具だくさんにして食べるほうが効果的だそうです。
■6人に1人が朝食抜きで「脳出血」の危険ゾーンに
ここで、もういちど、まとめておきます。
不動産情報サイトを手がけるオウチーノ(本社・東京)が、
20~35歳の働く未婚男女 554人を対象に実施したアンケート調査では、
朝食を「食べない」人が15.6%。
約6人に1人が「朝食抜き」だったということです。
でも、その朝食抜きが、脳出血や高血圧、糖尿病になる危険性を高めてしまう。
朝食を抜くことが多い人は、毎日食べる人に比べて、
「脳出血」のリスクが3割以上も高くなってしまいます。
脳出血を予防するための、より効果的な朝食の食べ方はというと・・・
起床後、一時間以内がベスト!
大事なのは、ご飯やパンなどの固形物を食べること。
コーヒー一杯だけというよりは、
シリアルや具だくさんのスープ、味噌汁を食べるほうが効果的。
これで起床時の血圧がピークに達する前、
「魔の時間帯」が訪れる前に血圧をコントロールできます。
「脳出血」は、半身麻痺、感覚障害のほか、
進行すると意識障害や失語症といった後遺症が残ってしまう怖い病気です。
その「脳出血」を予防し、高血圧や糖尿病を防ぐために、
朝食は毎日きちんと食べる。
これが、いちばんの健康法というわけですね。
参考:国立がん研究センター